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  ■ 「消しゴム」 (詩集 『マザー』ポプラ社より) 藤川 幸之助  
 
■ 音楽 家高 毅
    残された時間
(Sword Wind 風の剣に乗せてより)
■ 語り 村山 仁志
■ 構成 松本 篤彦

今までの人生を
すっかり
忘れ去って
出る出る
消しカス
私を消し去った
消しカスが
綿ぼこりと一緒に
机の下に落ちていた
記憶を消しながら
小さくなっていく
母の脳は
消しゴムになるしかなかった
母には消したいものが
いっぱいたまりすぎて
消しゴムになるしか
なかった
角もいびつに
丸くなってしまって
所々真っ黒になって
母の消しゴム
また
脳が少し小さくなりましたね
と医者に言われた
母が消した母の過去
その消しカスを集めて
丸めてみた
丸めて形を整えてみても
母にはならない
母の脳にはなりはしない
その消しカスで
私の過去をそっと消してみた

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