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■ 「パソコン」 (詩集 『マザー』ポプラ社より) 藤川 幸之助
 
■ 音楽 家高 毅
    カーニバル
(Sword Wind 風の剣に乗せてより)
■ 語り 村山 仁志
■ 構成 松本 篤彦

母が私のパソコンを触りたがった

このパソコンはなあ
いろんなソフトを入れたり
いろいろ手を加えていくと
中がぐちゃぐちゃになってきて
プログラムが
こんがらがってきて
動かなくなってしまうことがあるんよ
そんなときは
初期化と言って
全部消してしまって
また最初から
きれいな状態から
真っ白な状態から
始められるんよ
何のしがらみもない
何の病気もない
お母さんのぼけなんてみんな
なくなって
また最初から始められるんよ
どこからやったんやろうな
こんなに狂ってしまったのは
ぼくも母さんも
今度はそこに来たら
もう間違わんのやけどなあ
と仕事をしながら母に言ったら
蠅か何かが
顔に止まったのか
母が首を横に振った

お父さんのせいでも
お前のせいでも
私のせいでも
世間のせいでもないんだよと
母が首を横に振った
そうなるようになっていたんだ
このかっこわるい自分を頑張るしかないんだ
今の自分をやるしかないんだ
と三行
パソコンに書いて保存した

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