k-fujikawa の紹介

詩人、児童文学作家。認知症の母の世界を描いて、十数年。介護も終わり、そろそろ時々つぶやいてみようかと。命や認知症について全国各地で講演中。著作に『マザー』『君を失って、言葉が生まれた』(ポプラ社)、『満月の夜、母を施設に置いて』(中央法規)、『やわらかな まっすぐ』(PHP出版)等。

詩「本当のところ」◆講演情報

◆新型コロナウイルスで、2月末から延期や中止が続いていた講演会が7月5日(日)に4ヶ月ぶりに始まります。この講演は看取りについてもお話をしたいと思っています。今日の詩は、この講演会で朗読する詩です。
◆講演日 7月5日 (日) AM10:00〜PM12:00
・会場 福岡県大川市榎津844 覚了寺
・演題「命に寄り添うということ」
・問い合わせ 覚了寺 電話:0944-86-3655 
◆自選藤川幸之助詩集
 【支える側が支えられ 生かされていく】
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L1000251-2
本当のところ
         藤川幸之助
胃瘻から栄養を入れることができないので
高カロリー輸液を
母に中心静脈から入れるかどうか
医師に尋ねられた
「母はもうくたびれています
 もうゆっくりさせたいので
 入れないでください」
と、私は言って帰った
これが私の本当のところ

するとそう延命というわけでもないし
入れていいんじゃないかと
妻が言い
兄も
医者をしている兄の娘も
入れるのに一票投じた
本当は私の一存で
母を殺していいのかと思っていたので
安心したというのも本当のところ

静脈から高カロリーを入れて
元気になっても
この肺の状態では一、二ヶ月後肺炎になって
またこんな状態になるのは目に見えている
母を生かし続けるのに
罪のようなものを感じた
実はこれも本当のところなんだ

いつもは不携帯の私が
便所に入るときも
風呂に入るときも携帯して
夜中何度も何度も枕元の携帯電話を確かめる
母の死にびくびくするこんな日々が
また続くのかとも思った
「私はもうくたびれています
 もうゆっくりしたいので
 入れないでください」
と、私は言いたかったのかもしれない
これもまた本当のところ
「支える側が支えられ 生かされていく」(致知出版)より
©Konosuke Fujikawa【詩・写真*藤川幸之助】

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©Konosuke Fujikawa【詩・写真*藤川幸之助】
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【詩「夕日を見ると」】

◆「分かること」と「受け入れること」とは違う。母が認知症だということは重々「分かって」いるのだが、私のような感情をなかなかコントロールできない者には、毎日毎日同じことのくり返しだった。◆「分かって」はいるけれど、認知症の母を簡単には「受け入れる」ことができなかった。「受け入れること」とは自分のこととして「分かること」なのだ。母が認知症になった年齢に自らが近づきやっと分かってきたことだ。◆今日は長崎の海の夕日と、詩「夕日を見ると」の朗読動画をどうぞ。
【朗読動画】夕日を見ると

夕日を見ると
     藤川幸之助   
今日もここから
あの夕日が見えました
あの夕日を見ると
いつも思うんです
今日も母にやさしくできなかったと
もっと母にやさしくすればよかったと

ウロウロするな!
ここに座っていろ!
同じことばっかり言うな!
もう黙ってろ!
母さんが病気だって
分かっちゃいるけど
「おれの母さんだろう!
 しっかりしろ!」
と、つり上がった目で
何度も何度も母に言って
母は驚いて
私を悲しそうに見つめて
私は言った後自分をずっと責め続けて

この夕日を見ながら
明日こそ母へやさしくしようと
毎日毎日そう思うけれど
毎日毎日このくり返し
母さんごめんなさい
母さんに苛立つぼくを許してください
母さんごめんなさい
こんなぼくを許してください
「支える側が支えられ 生かされていく」(致知出版)より

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©Konosuke Fujikawa【詩・動画*藤川幸之助】

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詩「私の中の母」

◆「海よ、僕らの使ふ文字では、お前の中に母がいる。そして母よ、仏蘭西人の言葉では、あなたの中に海がある。」三好達治の第一詩集『測量船』の中の詩「郷愁」の一節だ。◆「海」という漢字の中には、確かに「母」という文字が入っている。また、フランス語で「母」はmère(メール)、「海」はmer(メール)と表記する。同じ発音だというのも面白いが、mère(母)の中には、確かにmer(海)は存在する。◆今日は私の住む長崎の海とともに詩「私の中の母」の朗読をどうぞ。
【朗読動画】

私の中の母
       藤川幸之助
母よ
認知症になって
あなたは歩かなくなった
しかし、私の歩く姿に
あなたはしっかりと生きている
母よ
あなたはもう喋らなくなった
しかし、私の声の中に
あなたはしっかりと生きている
母よ
あなたはもう考えなくなった
しかし、私の精神の中に
あなたはしっかりと生き続けている

私のこの身体も
私のこの声も
私のこの心も
私のこの喜びも
私のこの悲しみも
私のこの精神も
私のこの今も
私のあの過去も
私のあの未来も
この私の全ては
母よ
あなたを通って出てきたものだ

母よ

私は私の中に
あなたが生きていることが
とてもうれしいのだ
 「支える側が支えられ生かされていく」(致知出版)より

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©Konosuke Fujikawa【詩・動画・朗読*藤川幸之助】

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【詩「徘徊と笑うなかれ」】

◆一本の線を引くと「こちら側」と「あちら側」ができる。私にも線引きがあった。認知症の母を見ながら、私のこちら側は正常な世界で、認知症の母のあちら側は異常な世界だと、言葉には出さないけれど思っていた。◆線引きがあるうちは、そこには同情しか生まれない。本当の理解は存在しない。国境がそうだ。差別がそうだ。◆ある日、キューピー人形にお乳をやろうとしている母の姿が目にとまった。赤ん坊の兄か姉か私を大切に抱きしめていた。母は若い頃の自分に戻って、この今という時を生きているのだと思った。◆頭の中に広がっている世界の沿って今を生きているという意味では、私と母とは何ら変わらない。ただ母の中の思い出の順番が違っているだけだと思った。この今がどこかへ行って、昔の思い出が頭の中にあって…。私の中で一本の線が消えた。◆今日も朗読動画を作りました。ご覧いただければ幸甚です。

徘徊と笑うなかれ
         藤川幸之助
徘徊と笑うなかれ
母さん、あなたの中で
あなたの世界が広がっている
あの思い出がこの今になって
あの日のあの夕日の道が
今日この足下の道になって
あなたはその思い出の中を
延々と歩いている
手をつないでいる私は
父さんですか
幼い頃の私ですか
それとも私の知らない恋人ですか

妄想と言うなかれ
母さん、あなたの中で
あなたの時間が流れている
過去と今とが混ざり合って
あの日のあの若いあなたが
今日ここに凜々しく立って
あなたはその思い出の中で
愛おしそうに人形を抱いている
抱いているのは
兄ですか
私ですか
それとも幼くして死んだ姉ですか

徘徊と笑うなかれ
妄想と言うなかれ
あなたの心がこの今を感じている
 「支える側が支えられ 生かされていく」(致知出版)より

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【詩「母からの手紙」】

2020年05月22日
◆この新型コロナのため2月末から講演が軒並み中止になり、代わりに動画で朗読やお話をお伝えしようとがんばっているのですが、これがなかなかうまくいきません。◆朗読というのは詩にとっては命を吹き込まれるようなところがあって、大切にしなければならないのですが、人を前にではなくカメラのレンズを前にするとなかなかうまくいかないのです。◆これまで、朗読や講演の語りというものは、私が一方的に朗読し、語り、講演しているものだとばかり思っていましたが、実は聞いてくださる方々と共に作り上げているものだと実感しているところです。◆朗読や講演においても、聞いてくださる方々の眼差しに生かされ、支えられていたことをつくづく思いました。今日もうまくいっていませんが、精一杯朗読し、話しました。朗読動画、楽しみください。
#藤川幸之助朗読

母からの手紙
      藤川幸之助
母に会えない週末には
認知症の母への手紙を書いた
お元気ですかで始まり
寂しくないかと付け加え
元気でねと母へ手紙を書いた
言葉のない母はその手紙を
口にくわえてしゃぶると聞いた

手紙は読むものと思っていたが
そんな味わい方もあるのだと
いつもよだれを流しながら
私を見つめる母を見て思う
母は私を感じている

やっと時間ができて
熊本の老人ホームに母を訪ね
その手紙を母に読んであげる
これじゃ手紙の意味がないじゃないか
言葉のない老人と
ろくでもない者が向き合って
その足りない部分を
埋めあって生きている

一人の静かな夜
母からの手紙が届く
文字のない無言の
紙も字もない手紙が届く
いつものようにお元気ですかも
寂しくないかの付け加えもなく
元気でねとどこにも書いていない
母からの手紙が届く
「その自分を生き抜け」と
私の心の中に届く
私の心に響く
「支える側が支えられ 生かされていく」より
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