詩【「ポ」と「ユ」の間 】

◆今日は詩集「徘徊と笑うなかれ」(中央法規)より、【「ポ」と「ユ」の間 】という作品を。私の作品が掲載の以下の雑誌が発売になりました。是非ご一読を!

・「日本児童文学2015年5・6月号」(小峰書店)
  詩「おならのいきがい」
・「笑顔の介護vol.2」(プラス株式会社)
 「悲しみ」と「悲しさ」
・「月刊 介護保険2015.5月号」(法研)
  認知症でも消せないもの(上)
・「月刊 介護保険2015.6月号」(法研)
  認知症でも消せないもの(下)

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【「ポ」と「ユ」の間 】   藤川幸之助
  
ポックリ寺ツアーなるものが
高齢者に人気だと聞いた
ポックリ死なせてくれるように
お寺を巡礼するのだそうだ
子どもに迷惑をかけたくないと
口々に言っていた

父は家族にも囲まれず
ポックリ死んだ
迷惑はかからなかったが
深い悲しみと後悔が残った
母が認知症になってから二十三年
母は私に付き添われユックリと死んでいく
父の遺言で母の介護は始めたことだ
いやな顔で母を何度にらんだことか

「ポ」と「ユ」だけの違いなのに
こんなにも隔たりがあって
「ポ」と「ユ」の間で
このままでは俺の人生が台無しだと迷い
おれの母さんなんだろうと悲しみ
なんでこんなことも分からないのかと怒り
どうにか母さん生きていてくれと祈り
言葉のない母の心を分かろうと足掻いた

ポックリ寺ツアーなるものが
高齢者に人気だと聞いた
本音は迷惑をかけられた時の
子供たちの迷惑そうな顔で
傷つきたくないからのようだ

ある夜、ふと目を覚ますと仏壇の前で
最初は迷惑そうな顔をしていたが
息子は少しばかり人らしくなったと
「ポ」と「ユ」が嬉しそうに話していた

※ 「徘徊と笑うなかれ」(中央法規)より
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