生かされている私*詩「桜の家」

◆この五月は多忙だった。絵本の原稿を書きながら、仙台空港に向かって宮城の七ヶ浜で講演をした。講演会場から遠くに見える海を見て、東日本大震災の悲しみが胸に迫った。◆講演を終えて長崎に帰ると、前々から指摘されていた心臓の具合が良くない。病院に行くと緊急に治療を勧められた。次の日、カテーテル手術で心臓の冠動脈にステントを2本入れてもらい、三泊四日で退院して、北海道に向かった。◆北海道の新得町と清水町で講演をした。旬のアスパラも行者ニンニクもいただいた。この2回の講演で北海道の講演回数が41回になった。帰りに帯広で「中華チラシ」を食べて、帯広の三大名物を制覇した(他の2食は豚丼、インディアンカレー)。◆何か子どもの書いた日記のようになったが、講演の合間に手術をして、いつも通りに過ごしている自分を見て、医学の進歩を深く感じた。自分のこの命が多くの人たちに支えられて、ここに生かされていることを改めてしみじみ思う。この週末は沖縄での認知症ケア学会での講演だ。2009年11月以来の沖縄での講演。【沖縄の方々、久しぶりの講演です。お誘い合わせの上ご参加ください(詳細は以下)。】◆今日の詩は、宮城の七ヶ浜での講演で「桜の家」という施設に書き下ろした詩をどうぞ。2017/05/25

◆藤川幸之助・講演 (日本認知症ケア学会・特別講演4)
 認知症の人と「この今」を生きる〜存在に耳をすますということ〜
◆2017年5月27日 (土) AM 9:00〜AM10:00
◆会場 沖縄県宜野湾市 沖縄コンベンションセンター・会議棟A/第2会場
問い合わせ  認知症ケア学会 電話:03-5206-7431

命が命を生かす瞬間より

桜の家    「七ヶ浜桜の家」開設記念に

  藤川幸之助
こんなにも繰り返すのに
こんなにも待ち遠しい

桜の花びらの舞い散る
桜色の道を歩くときまって
あなたに手を引かれて
小学校の門をくぐった
日のことを思い出す
母の手を強くにぎって
私ははなさなかった

今は春が来るごとに
あなたの手を引いて花見に行く
あなたは桜を見上げて
あーあーと声を上げる
私の手を強くにぎって

引いた側が引かれて
支えた側が支えられ
叱った側が叱られて
守った側が守られて
花びらの向こう側に
愛することがじっと佇んでいる
桜の花の淡い色の中で
時間だけが
静かに行ったり来たりする

こんなにも繰り返すのに
こんなにも待ち遠しい
桜の家
 2017.05.12