詩「手帳」◆10月、11月の講演会

◆この10月と11月の講演会は全て北海道です。この講演会で講演回数は469回になります。その中でも北海道での講演は46回にも上ります。北海道の皆さん、お時間がありましたら是非講演を聞きに来ていただければ幸甚です。◆今日の詩はその講演会でも朗読予定の詩「手帳」です。
◆「手帳」◆
藤川幸之助
母が決して誰にも見せなかった
黒い鉛筆付きの手帳がある。
いつもバッグの底深く沈め
寝るときは枕元に置き
見張るように母は寝た。
その手帳が
今私の手の上に乗っている。

父の名前、兄の名前、私の名前。
手帳には、びっしりと
忘れてはならぬ名前が書いてある。
そして、手帳の最後には
自分自身の名前が、ふりがなを付けて
どの名前よりも大きく書いてあり
その名前の上には、何度も鉛筆でなぞった跡。
母は何度も何度も
自分の名前を覚え直しながら
これが本当に自分の名前なんだろうかと
薄れゆく自分の記憶に
ほとほといやになっていたに違いない。
母の名前の下には
鉛筆を拳(こぶし)で握って押しつけなければ
付かないような黒点が
二・三枚下の紙も凹ませるくらい
くっきりと残っている。


父・母・兄・私の四人で話をしていたとき
母は自分の話ばかりをした。
母は同じことばかりを繰り返し言った。
「同じ話ばかりするのは、やめてくれ」
と、私は母をにらみつけた。
病気とも知らず。
話について行けない母は
その場からいつの間にかいなくなっていた。

あまりに帰らないので
探しに行くと
三面鏡の前に母はいた。
自分の呼び名である「お母さん」を
何度も何度も何度も唱えていた。
記憶の中から消え去ろうとしている
自分の連れ合いの名前や
息子の名前を何度も唱え
必死に覚え直していた。
振り返った母の手には
手帳が乗っていた。
私に気づくと、母は
慌(あわ)ててカバンの中に
その手帳を押し込んだ。
その悲しい手帳が
今私の手の上に乗っている。
『満月の夜、母を施設に置いて』(中央法規)に関連文

◆みなさま、宜しければ「シェア」をお願いします。
多くの方々に講演を聞いていただければと思っています。
©Konosuke Fujikawa【詩・文*藤川幸之助】

① 2019年10月19日(土)12:30~17:00
<日本ホームヘルパー協会函館支部 北部ブロック研修会>
会場:北海道教育大学函館校(函館市八幡町1番2号9
主催:日本ホームヘルパー協会函館支部(ご担当/酒井さま)
お問い合わせ:訪問介護ステーション輪(りん)酒井さん
電話:0138-85-6185

② 2019年10月20日(日)13:00~17:00
<社会福祉法人 幸清会 周年記念式典>
会場:豊浦町(※ 法人内関連施設)
主催:社会福祉法人 幸清会(こうせいかい)
〒049-5721 北海道虻田郡洞爺湖町洞爺湖温泉191
お問い合わせ:特別養護老人ホーム大原の杜 吉田恵施設長
電話: 0142-89-3500

③2019年10月29日 (火)18:00〜20:00
会場:北海道石狩郡当別町 介護老人保険施設 愛里苑ホール
問い合わせ :介護老人保険施設・愛里苑 事務課・増田さん
電話:0133-26-2874

④ 2019年11月10日(日)10:30~12:30
<プロから学ぶ 認知症と人を学ぶ4日間>
会場:ライフシップ植物園前 12階ディサービス内
札幌市中央区北5条西10丁目6番1
主催:(株)ライフデザイン
お問い合わせ:(株)ライフデザイン担当 相川さん
電話:011-215-5138

⑤ 2019年11月13日(水)18:00~20:00
<認知症ケア職員研修会>
会場:特別養護老人ホーム 旭川ねむのきの華
旭川市忠和4条2丁目10番23号
お問い合わせ:特別養護老人ホーム 旭川ねむのきの華
電話:0166-61-3277

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