詩と死*詩「言葉」

◆石垣りんさんの「表札」のような詩をいつか書きたいと思った。何度も何度も石垣りんさんの詩を書き写した。その年生まれた娘に「凜(りん)」と名付けた。そんな、石垣りんさんが亡くなってもう10年が経つ。◆二十代後半、まど・みちおさんから、励ましのハガキをもらった。今でも大切にとってある。名もない、生意気な実もない私のような者にも優しい人だった。『てんぷらぴりぴり』や『まめつぶうた』に言葉による新しい世界を見た気がした。詩を書き続けていこうと思った。そんなまどさんは昨年亡くなった。◆この5月、詩人の長田弘さんが亡くなった。二十代の頃、長田さんの『深呼吸の必要』を何度も何度も読んだ。吉野弘さん、川崎洋さん、茨木のり子さん、北村太郎さん、田村隆一さん、私が若い頃から憧れていた詩人達が亡くなっていく。◆才気煥発な詩人とはいかないことぐらい、自分で重々承知しているので、この詩人達の詩集を本がすりきれるまで読むことで、自分の中に詩が生まれて来るのを待った。いつもいつも詩集を持ち歩いた。この詩人達が私のお手本であり、自分の詩を生み出すために破らなければならない壁だった。◆今日は詩「言葉」を。【詩・写真・エッセイ*藤川幸之助】

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言葉
  藤川幸之助
私の詩があなたに触れたとき
私の言葉は亡骸のようだ
私の詩があなたに触れたとき
私の言葉は私のもののままで
私の詩はもうあなたのものだ

あなたの詩が私に触れたとき
あなたの言葉は亡骸のようだ
あなたの詩が私に触れたとき
あなたの言葉はあなたのもののままで
あなたの詩はもう私のものだ

あなたの死が私に触れたとき
あなたの亡骸は言葉のようだ
あなたの死が私に触れたとき
あなたの亡骸はあなたのもののままで
あなたの死はもう私のものだ

私の死があなたに触れたとき
私の亡骸は言葉のようだ
私の死があなたに触れたとき
私の亡骸は私のもののままで
私の死はもうあなたのものだ
2015/06/12書き下ろし